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活動報告

掲載日:2019.03.28

現地駐在専門家 安齋雅彦

今回は、今年初めから取り組み始めた牛乳バリューチェーンの衛生調査について、そして協力農家の一つであるRubyerwa Farmでのワークショップについて報告したいと思います。

  • 牛乳バリューチェーンの衛生調査について 

農場と集乳所との間で、牛乳及びその貯蔵容器(ミルク缶及びバルククーラー)にどのような衛生学的な違いがあるかを調査しました。今回の調査では、細菌検査に焦点をあてて、採材は、プロジェクト協力30農家からは、ミルク缶中のバルク乳、使用前のミルク缶内壁の拭き取りスワブ、洗浄後のミルク缶内壁の拭き取りスワブ、そして集乳所では、バルククーラー中のバルク乳、洗浄後のクーラー内壁の拭き取りスワブからサンプリングしました。これにより、各農場と集乳所でのバルク乳の細菌数の違い、洗浄前後でのミルク缶及び洗浄後のバルククーラーの衛生状態について把握できます。

写真1.2 集乳所でのミルク缶及びバルククーラーの様子

細菌検査では、5%羊血液寒天培地及び3Mペトリフィルム生菌数測定用プレート(ACプレート)を用いました。血液寒天培地では、菌数を目測により1~6にレベル分けし視覚生菌数スコアを判定し、ペトリフィルムでは、実際の生菌数を測定しました。

写真3.4 血液寒天培地とペトリフィルムでの培養結果

この調査で大変なことは、検査室でのラボワークももちろんですが、サンプル採材のためのスケジュール調整です。農家ごとに搾乳回数や搾乳時間さらにミルク缶洗浄時間が異なるため、その時間に合わせてサンプリングしに行く必要があります。また集乳所においても、日本ではある程度洗浄時間が決まっていると思うのですが、こちらでは洗浄時間がその日により異なるので、集乳所のスタッフと連絡を取りながら調整する必要があります。

写真5.6 農場でのミルク缶洗浄の様子と缶内壁のスワブサンプル採材の様子

このような中、新しいメンバーが今回の調査に参加してくれました。 National  Agricultural Research Organization (NARO)の傘下にあるNational Livestock Resources Research Institute (NaLIRRI) の研究者であるDr. James Bugezaさんです。彼は、精力的に採材及びラボワークに参加してくれ、プロジェクトのチームメンバーとも活発に交流してくれました。また、本プロジェクトのカウンターパートである酪農開発機構Dairy Development Authority(DDA)の普及員もこの調査に参加してくれ、関心の目を向けていました。今後、このDDAを含めた集乳所との結果共有の機会を設けたいと思っています。

写真7.8 バルククーラーからサンプル採材の様子(Dr. Bugeza)と検査室での様子

今回の調査を通して、気づいたことの一つは、ウガンダの牛乳の輸送システムはとても様々なことです。自転車やバイクで運搬したり、日本のようにトラックを利用する場合もありますが、冷蔵輸送でなかったり、また農家の立地条件(農場と集乳所との距離、悪路等)も様々なので、それらの要因によって運搬に係る所要時間はかなり異なることが分かりました。今回の調査では、実施できなかったですが、これらの輸送システムの違いによる衛生状況を把握するのも人々の健康を守る上で非常に重要だと感じました。

写真9. バイクでのミルク缶輸送の様子
  • Rubyerwa Farmでのワークショップについて

次に協力農家の一つであるRubyerwa Farmでプロジェクト協力農家を集めたワークショップを行ったので報告したい思います。このワークショップの目的は、プロジェクトの進捗報告と協力農家のうち最も近代的な農家であるRubyerwa Farmで酪農ビジネスについて各農家に学んでもらうことにあります。

まずは、蒔田教授が、これまでに実施してきた各農家の介入パッケージの導入状況についての報告を行いました。具体的には、まずチェックリストを用いて介入パッケージ(搾乳衛生、繁殖・栄養管理、ダニ媒介性疾病防除)の各項目を実施しているかアンケート調査したもののデータを統計学的に解析しました。そして、それをどの農家がどの項目について向上しているかグラフ化し、ファームランキングにした表を示しながら、説明しました。各農家さんは、自分の農家がランキングに入っているかどうか、とても興味津々に聞いていました。

次に、私が牛乳バリューチェーン衛生調査の結果報告を行いました。基本的に、集乳所も農場でも結果がすぐれなかったので、農家さんには少し衝撃的だったかもしれませんが、衛生意識を向上させるのには良い機会になったのではと思います。そして、トビタテ留学生の獣医学科5年生の梅原さんが県普及員のアリスと女性グループディスカッションについての報告を行いました。これは、女性酪農家の地位向上及び現状把握を目的に、過去二回行ったものをまとめたものです。旦那に決定権がある、お小遣いを旦那が握りしめている等、男性側にとってはシビアな内容でしたが、会場にいた参加者男性たちは意見を素直に受け止めてくれ、意見交換も活発に行われたセクションになりました。

写真10,11 プレゼンの様子(安齋、梅原)

次に、搾乳衛生に関する物品を販売している首都カンパラの業者さんにもプレゼンを行ってもらいました。具体的には、乳頭消毒のためのカップや試薬、また乳房炎検査の試薬や機器について実際に商品を陳列し説明してもらいました。農家さんにとっては、これらの商品に興味はありますが、ムバララではこられの商品が流通していないことが多いので、なかなか手に入れにくいというのが現状でした。そのことを業者さんに伝えたところ、今後ムバララにも商品を卸す予定があるとのことで、ムバララで搾乳衛生技術がますます向上することを期待します。そして最後に、Rubyerwa FarmのディレクターであるPaulさんが酪農ビジネスについてプレゼンしてくれました。経営とは何か?というもっとも根源的なマインドのところを説明してくれ、各農家のオーナーは熱心に彼の講演を聞いていました。その中で、日々の記録簿を正確につけること、収支を把握すること、質を担保することなど、参加農家さんにとっては、できそうでなかなか実践できていない非常に興味のある、有意義なプレゼンだったのではないかと思います。

写真12, 13, 搾乳衛生関連商品の説明(Mr. Shaban)、酪農ビジネスについてのプレゼン(Mr. Paul)

最後になりますが、今回の、ワークショップは、今までの開催場所であった県庁でのワークショップと違い、一つの農家さんに他の協力農家さんを招待するという、少しチャレンジングな内容でした。最初は、開始時間に集合していたのは、2人のみだったので、かなり不安でしたが、徐々に参加者は増え、最終的には20人以上になりました。結果、多くの参加者から、今回のワークショップは、有意義だったとの声をいただいたので、一安心しました。プロジェクトも終盤に入って来ていますが、農家さん一人一人の意見を聞きながら、最後まで気を抜かずに活動したいと思います。

写真14, ワークショップ後の集合写真