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牛に快適な暮らしを提供する削蹄という仕事

生産動物外科学 村上 高志

掲載日:2023.11.28

酪農において、蹄病が大きな問題となっていることをご存知でしょうか。蹄病というのは、牛の蹄(ひづめ)に穴が開く、あるいは亀裂が入ることで疼痛が生じる疾病の総称です。蹄病に罹患した牛は歩くたびに肢に痛みを感じることから、牛の安楽性は著しく低下してしまいます。
蹄病の原因として、蹄の伸びるスピードが速いことと、それに伴う蹄の変形が指摘されています。自然界の牛は蹄の伸長が速くても、歩くことで地面との摩擦による摩耗でバランスがとれており、最適な蹄の形が維持されています。しかしその一方で、酪農場で暮らす牛達は人工的なコンクリート環境で暮らしているため、それらのバランスが崩れています。このため、酪農場では頻繁に蹄の過長や変形によって蹄病が引き起こされるのです。
そんな牛達の蹄をメンテナンスし、未然に蹄病を防ぐ仕事として削蹄師という職業があります。削蹄師は現代の酪農・畜産業において非常に重要な役割を担っており、欠かすことのできない職業です。日本では、日本装削蹄協会が牛削蹄の資格認定を実施しており、2級認定牛削蹄師がその入門資格になっています。酪農学園大学はその認定講習及び試験の開催を5年連続でサポートしており、学生たちはその資格を取得すべく、そして牛達に快適な暮らしを提供するために日々練習に励んでいます。

削蹄前の伸びている蹄 蹄が伸びているため、左前肢は本来より前側に着地し、左後肢は外に向いて着地している

削蹄後 着地する位置も肢の向きも真っすぐになった

2級認定牛削蹄師試験の様子 牛を並べて係留し、受験者は二人で1頭を実際に削蹄する

削蹄は自分で牛の肢を持ち上げた状態で行う