東海岸熱対策に係るウガンダ共和国での活動報告
掲載日:2017.09.07
東海岸熱(East coast fever)はマダニにより媒介される牛の原虫病(Theileria parva感染症)であり、主にアフリカ東部で猛威を振るい、畜産業に甚大な被害をもたらしています。本JICA草の根プロジェクトでは、本疾患の対策を目的の一つとし、①マダニの殺虫剤に対する耐性試験、および②農家ごとの東海岸熱の侵淫状況の調査を行っています。今回、私は8月10~19日の日程でウガンダ共和国Makerere大学を訪問し、現地の学生らと共に東海岸熱の侵淫状況調査を実施しました。
現地ではまず、遺伝子を長期間保存できる濾紙(FTAカード)と廉価な塩基性試薬を組み合わせることにより、市販の遺伝子抽出キットを用いる方法より高感度かつ安価なPCRの系を準備しました。本手法は遺伝子抽出過程において、高価な抽出キットや高速遠心分離機、恒温槽を必要とせず、現地の施設において、比較的容易に継続が可能です。また滞在中、本手法を用い215頭、13農場におけるT. parvaの感染率を明らかにしました。その結果、同じMbarara県内においても、農場ごとの陽性率は0~100%と大きく異なり、農場ごとの平均感染率は33.2%であることがわかりました。
今後は、さらに簡便かつ安価で高感度なT. parvaの検査法を現地の研究員、学生らと模索すると共に、彼らがそれらを使えるよう指導していきたいと考えています。また、農場ごとの感染率が判明したことで、今後、農場巡回の際、高感染率の農場に対しより集中的なマダニ対策の指導を行うことが可能になると思われます。
T.parva検出用PCRの電気泳動像
内田玲麻(酪農学園大学 獣医学群・人獣共通感染症学ユニット)
Makerere大学RTC labでの実験風景①
Makerere大学RTC labでの実験風景②
Makerere大学RTC labの学生、Dr. Joseph(右から3人目)とともに